作品情報
| タイトル | プレイグ テイル イノセンス |
| 原題 | A Plague Tale: Innocence |
| 発売年 | 2019年 |
| ジャンル | アクションアドベンチャー / ステルス |
| 開発 | Asobo Studio |
| 販売 | Focus Home Interactive |
| プレイ環境 | PS5pro |
| プレイ時間 | 約15時間 |

あらすじ
1348年、黒死病がヨーロッパ中に広がるフランス。
貴族の娘アミシアは、病弱な弟ユーゴとともに、突如として平穏な日常を失う。異端審問に追われ、疫病に侵された世界を逃げ延びる中で、二人は数え切れないほどの困難と向き合うことになる。
プレイヤーは、光を恐れる大量のネズミや兵士たちを相手に、ステルスやパズルを駆使しながら旅を続ける。
史実をベースに描かれた14世紀フランスを舞台に、姉弟の絆と成長を描くアクションアドベンチャーだ。
史実とフィクションが巧みに織り交ぜられたこの世界で、アミシアとユーゴはどんな運命をたどるのか。その答えは、ぜひ本作で見届けてほしい。
良かったところ
パズルとステルスが生み出す絶妙なゲーム体験
『プレイグ テイル イノセンス』は、敵を次々と倒して進むゲームではない。
光を恐れるネズミを利用しながら道を切り開き、ときには敵の視線をかいくぐり、ときには周囲のギミックを活用して突破する。アクション一辺倒ではなく、パズルとステルスが自然に組み合わさっているため、最後まで「次はどう進もう」と考えながら遊べた。
難易度も極端に高くなく、試行錯誤そのものが楽しい作品だった。
14世紀フランスをリアルに描いた世界観
本作の魅力は、舞台設定にもある。
14世紀後半のフランスを舞台に、黒死病が猛威を振るう時代を描いている。荒廃した村や街並み、不安に包まれた人々の暮らしが丁寧に表現されており、ゲームでありながら歴史の中を旅しているような感覚を味わえた。
史実をベースにしているからこそ、ファンタジーだけでは出せない重厚な空気が作品全体を包んでいる。
姉弟の旅路が物語を支える
派手な英雄譚ではなく、一人の姉が弟を守るために必死に生き抜く物語。
旅を続ける中で、アミシアとユーゴの関係は少しずつ変化し、お互いを支え合いながら成長していく。
華やかな演出ではなく、二人の小さな積み重ねが物語に説得力を与えており、最後まで感情移入しながら見届けることができた。

気になったところ
アクションはやや単調に感じた
本作はステルスやパズルを中心としたゲームデザインのため、派手なアクションを期待すると少し物足りなさを感じるかもしれない。
ゲームを通して基本的な攻略の流れは大きく変わらず、中盤以降は「またこのパターンか」と感じる場面もあった。
もちろん、新しいギミックや能力は少しずつ追加されるが、ゲームプレイの根幹は最後まで大きく変化しない。そのため、人によっては単調に感じる可能性がある。
とはいえ、本作の魅力は爽快なアクションではなく、物語や世界観をじっくり味わうことにある。そう考えれば、このゲームデザインも作品のテーマにはよく合っていたように思う。

エンドロールの向こう側
なぜ14世紀フランスだったのか
開発したAsobo Studioはフランス・ボルドーのゲームスタジオ。
自分たちの国の歴史である黒死病や百年戦争を題材に、「歴史の教科書ではなく、人間の物語」として描きたいという発想から、この世界観が生まれた。さらに、兄妹の絆を軸にした作品として、開発陣は『The Last of Us』や『Brothers: A Tale of Two Sons』からも影響を受けたと語っている。
ネズミは「モンスター」ではなく、疫病そのもの
本作に登場する大量のネズミは、単なる敵キャラクターではない。
開発陣は、ネズミの群れを黒死病そのものを象徴する存在として描いたという。当時の人々にとって疫病は目に見えない恐怖だった。その恐怖をゲームとして体験できるよう、「ネズミの大群」という形で可視化した。
フランスだからこそ描けた物語
本作の舞台は1348年のフランス。
開発陣にとっては、学校で学んできた自国の歴史でもある。そのため、歴史をただ再現するのではなく、「大人の視点であの時代を描き直したかった」と語っている。荒廃した村や宗教、戦争、疫病が重なり合う世界には、そんな開発者たちの思いが込められている。
こうした背景を知ると、ゲーム内で見た景色やネズミの群れは、単なる演出ではなく「14世紀の恐怖」を表現するための存在だったことに気付かされる。
エンドロールを迎えたあと、もう一度アミシアとユーゴの旅を振り返りたくなる。それこそが、本作の大きな魅力なのかもしれない。
⚠️ ここからネタバレあり 本作のラストまで触れています。未プレイの方はご注意ください。
ユーゴが覚醒した瞬間、この物語は姿を変えた
物語の終盤、ユーゴはマキュラの力を完全に解放し、ネズミの大群を自在に操るようになる。
ゲームとして見れば、これまで逃げ続けてきたネズミが”力”へと変わる印象的な場面だ。しかし、爽快感よりも先に感じたのは恐ろしさだった。
ユーゴはまだ幼い子どもだ。
そんな子どもが、自分では制御しきれない力を持ってしまった。
これはヒーローの覚醒ではない。
幼い子どもが、あまりにも大きな運命を背負わされる瞬間だった。
マキュラは「呪い」ではなく、人間の歴史だった
プレイ中はマキュラを超常的な呪いのように捉えていた。
しかし物語が進むにつれ、それは古くから受け継がれてきた血であり、歴史そのものだったことが分かる。
14世紀という時代は、黒死病だけでも十分に人々を恐怖へ追いやっていた。
そこへ「受け継がれる血」というもう一つの恐怖を重ねることで、本作は単なる歴史ものでもファンタジーでもない、独自の世界観を作り上げている。
史実をベースにしながらも、そこへフィクションを自然に溶け込ませた構成は見事だった。
アミシアが守り続けたのは、ユーゴの命だけではない
旅の途中、アミシアは何度も人を殺める。
最初は震え、戸惑っていた少女が、弟を守るためなら剣を取り、敵と向き合うようになる。
それでも最後まで失わなかったものがある。
それは、ユーゴを「兵器」ではなく「弟」として見続けたことだ。
周囲がマキュラの力だけを恐れる中、アミシアだけは最後までユーゴ自身を見ていた。
だからこそ、この物語は黒死病やネズミの話ではなく、姉弟の物語として心に残った。
希望が残されたエンディング
エンディングは決して手放しのハッピーエンドではない。
多くの犠牲を払い、二人の旅は終わる。
それでも、最後に二人が穏やかな日常へ向かって歩き出す姿を見たとき、絶望だけでは終わらなかったことに救われた。
そして同時に、「この先の二人はどうなるのだろう」という期待も生まれた。
続編『プレイグ テイル レクイエム』へ自然と手を伸ばしたくなる締めくくりだった。
エンドロールのあとで
エンドロールが流れたあと、僕の頭に残ったのはネズミの大群ではなかった。
黒死病でも、異端審問でもない。
最後まで弟を信じ続けたアミシアと、その想いに応えようともがいたユーゴ。
史実をベースにした重厚な世界観の中で描かれたのは、極限状態でも失われなかった家族の絆だった。
だからこそ、この作品はクリアしたあとも、もう一度あの旅を思い返したくなる。
エンドロールが流れたあと、本当の物語はプレイヤーの中で始まるのかもしれない。
まとめ
『プレイグ テイル イノセンス』は、派手なアクションや爽快感を味わうゲームではない。
黒死病が広がる14世紀フランスという史実をベースに、姉弟の絆や成長を丁寧に描いた、物語をじっくり味わう作品だ。
ゲームとしてはアクションの単調さを感じる場面もあったが、それを補って余りある世界観とストーリーがある。さらに、制作背景や史実を知ることで、一つひとつの演出や出来事が違った意味を持ち始める。
プレイ中はもちろん、エンドロールが流れたあとも作品について考え続けたくなる。そんな余韻こそが、『プレイグ テイル イノセンス』最大の魅力なのかもしれない。
もしこの記事を読んで、「もう一度あの世界を歩いてみたい」と感じたなら、それはこの作品があなたの心にも何かを残した証拠だと思う。
あなたは、このエンドロールのあとで何を感じましたか。
作品は終わっても、その余韻はまだ続きます。
